District Energy

地域熱供給白書

都市部のためのグリーンな冷暖房

State of Green

この白書は、デンマークをはじめとする世界各国で100年以上にわたって地域熱供給を利用してきた経験から蓄積された知見を紹介しています。制度、規制の枠組み、計画、エネルギー源の効率性と柔軟性、蓄熱、将来の展望など、地域エネルギーの利用を拡大したい場合に考慮すべき主な学習事項を、世界中の関連事例を交えて紹介しています。

District Energy

Green heating and cooling for urban areas

Version 3.1

State of Green

元レポート 2020年

日本語翻訳 2021年

編集委員会

Niels Frederik Malskær (Danish Energy Agency), Morten Jordt Duedahl (DBDH), Hans Peter Slente (Danish Energy Industries Federation)

寄稿者

Dr. Brian Vad Mathiesen (Aalborg University), Martin B. Petersen (ABB Denmark), Casper Christiansen (District Heating Dronninglund), Theodor Møller Moos (COWI), Jonna Senger (Danfoss), Jan Strømvig (District Heating Funen), Kim Winther (District Heating Funen), Anders Nielsen (Grundfos), Jakob Thanning (HOFOR), Uffe Schleiss (Høje Taastrup District Heating), Stephen Mirkovic (Islington Council), Kristian Rødbro (Kamstrup), Steen Schelle Jensen (Kamstrup), Peter Jorsal (Logstor), Jørgen Ægidius (Logstor), Anders Dyrelund (Ramboll), Flemming Ulbjerg (Ramboll), Jens Østergaard Jørgensen (Silkeborg District Heating)

表紙写真(Sorø Fjernvarme)

Credit: AffaldPlus
Photo: Steen Knarberg

日本語版監修

特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所

日本語版発行協力

一般社団法人全国ご当地エネルギー協会

State of Green (2020) District energy: Green heating and cooling for urban areas, State of Green, Copenhagen.

本レポートは “District energy: Green heating and cooling for urban areas” (2020) の公式な日本語翻訳版です。日本語版のPDFは全国ご当地エネルギー協会ホームページからダウンロードできます。本書(日本語版)は独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の活動助成により作成されています。
この白書では「District energy」を「地域熱供給」と訳している。和英いずれも日本で一般的な「地域冷暖房」を含んだ用語である。なお「冷(暖)房」を強調している場合のみ「地域冷暖房」または「地域冷房」と訳しています。

目次

地域熱供給 — 強力なグリーン経済の基盤

” 地域熱供給は、グリーンな経済の成長を支える最先端の技術です。

Dan Jørgensen

デンマーク気候・エネルギー・ユーティリティ大臣
Dan Jørgensen

地域熱供給は、パリ協定を達成するための中心的なソリューションです

世界の気温上昇を2°C未満に抑え、1.5°C以下に抑えるというパリ協定の目標を達成するためには、世界中の国々が実績のあるグリーン技術を導入する必要があります。地域熱供給はその解決策の一つであり、限られた資源を最もコスト効率の高い方法で利用する、競争力のあるグリーン経済に貢献します。

デンマークの事例を世界のショーケースに

デンマークは、地域熱供給が、費用対効果に優れ、エネルギー効率が高く、気候に優しい冷暖房を都市エリアで供給できることを示すショーケースです。デンマークでは、住宅3戸のうち2戸が地域熱供給で暖房や給湯を賄っています。

熱と電力を一緒に供給すると、熱と電力を別々に供給するよりも総合効率が格段に高くなります。このように、地域熱供給はデンマークのグリーン転換(Green Transition)において重要な役割を果たしています。

リープフロッグの機会

現在デンマークは、ウクライナ、イギリス、トルコ、ドイツ、中国など世界各国と協力して、強力でクリーンな地域熱供給システムの開発に取り組んでいます。

このようなグローバルな協力関係の一例として、デンマークは中国政府と半世紀以上にわたり、エネルギー効率と地域熱供給に関して協力してきました。この協力関係は、エネルギー計画と地域熱供給の分野で、現地の意思決定者と技術スタッフの能力開発に重点を置いています。地域熱供給は、暖房の約50%をカバーする可能性があります。

中国での技術的な改善や化石燃料からの脱却とともに、熱環境の快適さへの関心は今後も高まっていくでしょう。熱分野は同時に、他の分野に柔軟性を提供し、再生可能エネルギーの導入を促進することで、温室効果ガス排出量を削減します。

この白書では、地域熱供給の政策的な枠組みを説明し、主要な要素をベストケースの事例で示し、低温熱供給や地域冷房などの開発分野を通じて地域熱供給の将来像を描いています。

みなさまが日本で取り組むにあたって、インスピレーションにつながれば幸いです。

デンマークの64.5%の家庭が地域熱供給ネットワークに接続されており、デンマークの4大都市では、熱需要の95%以上が地域熱供給でカバーされています。

デンマークの地域熱供給の60%以上は、バイオマス、バイオガス、太陽熱、地熱および電気の再生可能エネルギー源から供給されています。

デンマークの地域熱供給ネットワークは60,000kmに及び、10億リットルの温水が供給されています。

この白書について

地域熱供給とは、冷暖房を個別に供給するのではなく、まとめて供給することで価値を生み出し、同時に気候変動目標の達成にも貢献する方法です。ある場所では何の価値もない(あるいはほとんど価値がない)冷熱が、必要な場所に運ばれることで高い価値を持つようになります。地域熱供給は、この価値の創造を担うシステムです。搬送には温水や冷水を使います。簡単に言えば、地域熱供給とは、価値のある温度の水にエネルギーを乗せて、生産地から消費地まで運ぶことです。

地域熱供給は、冷暖房のニーズが集中している多くの地域で実施可能です。大都市、中小都市を問わず、工業地帯や人口密集地などに導入されています。地域熱供給の初期投資の大部分は、地中に熱導管を敷設するインフラの構築が占めます。高品質の断熱パイプを使用することで、この投資設備が何十年も使用されることを保証し、時間の経過とともに地域熱供給システムの運用コスト全体の中で占める割合は小さくなります。消費者側では、適切な設備の設置、計測、熱調整を行うことで、使用にも支払いにも手間かからず、室内環境も大幅に改善されます。

この白書は、デンマークをはじめとする世界各国で100年以上にわたって地域熱供給を利用してきた経験から蓄積された知見を紹介しています。制度、規制の枠組み、計画、エネルギー源の効率性と柔軟性、蓄熱、将来の展望など、地域エネルギーの利用を拡大したい場合に考慮すべき主な学習事項を、世界中の関連事例を交えて紹介しています。

地域熱供給システムの概要

地域熱供給システムの概要

熱は、多くの供給源から生産または余剰熱として収集され(図の下の部分)、高効率の地域熱供給用熱導管を通って需要家に送られます。蓄熱設備を利用することで、短期間またより長期間にわたって熱の生産と供給のタイミングを場合によっては数か月も分離することが可能になります。

複数の熱の生産設備があれば、地域熱供給システムの経済性を継続的に最適化することができます。需要家は、利用可能な最良の供給源から供給される熱を享受でき、1つの燃料の選択に縛られることはありません。

地域熱供給の核心

燃料の柔軟性と安定供給

フュン地域熱供給(Fjernvarme Fyn)マネージング・ディレクター
デンマーク地域熱供給協会(DBDH)会長 Jan Strømvig

地域熱供給は非常に強靭です。その利用の歴史は100年以上前にさかのぼります。現在では、持続可能な都市の発展に欠かせない要素となっています。

地域熱供給システムは、集中的に生産された熱を熱導管網を通じて多数の需要家に供給するものです。このようにして、ある場所では価値の無い、あるいは非常に価値の低い熱、例えば産業用の排熱を、小さな町や大規模な都市コミュニティなど、熱の需要が大きい場所では価値の高い熱に転換することができるのです。

個別暖房・給湯と比較した場合の地域熱供給の利点

個別暖房・給湯では、石炭、石油、天然ガスなどの特定の種類の燃料しか使用できません。これは、需要家にとって、暖房費が特定の燃料の価格上昇に完全に影響されることを意味します。地域熱供給では、様々な種類の燃料の価格変動に対応して市場の力を利用することができます。また、地域熱供給を利用することで、燃料の輸入を避けたり、CO2排出量の目標など、社会的な志向性や政策的な目標を達成することも可能になります。

要するに、燃料を変更する場合に、何千戸もの住宅の暖房・給湯機器を交換するよりも、例えば天然ガスを一箇所から供給する場合のほうがはるかに簡単なのです。今日では、風力発電などの余剰電力で電気料金が実質ゼロになると、電気を使って熱を作ることもあります。

柔軟性が主な利点の一つ

地域熱供給や地域冷房を集中的に熱源設備で生産することで、複数の燃料を利用することができます。これにより、地域熱供給の生産は非常に柔軟になります。これにより、供給の安定性と生産効率の両方が向上します。1つの熱源設備が故障しても、代わりの熱源設備が利用でき、地域熱供給事業者はいつでも最も安い燃料を選択することができます。また、地域熱供給ネットワークを構築することで、社会的に質の低い排熱の利用も可能になります。それは、産業や廃棄物の焼却による排熱や、熱電併給(CHP)による排熱などがあります。

100年前の技術が今でも当時と同様に活用されている

世界は、利用可能なすべての持続可能なエネルギーを利用することをさらに目指す必要があります。そのエネルギー資源を最適な方法で利用しなければなりません。つまり、あらゆる熱源からの排熱を利用し、化石燃料を太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギーに置き換え、さらに電気と熱のシステム統合を実現しなければなりません。

また、将来的には、大規模な季節間蓄熱という形で、夏から冬にかけて熱を蓄える可能性も高まるでしょう。地域熱供給は、これらの課題に対する答えを提供するものであり、将来の都市コミュニティやスマートシティの基盤として考えられるべきものです。地域熱供給の導入は小規模から始めることができ、時間をかけて徐々に都市コミュニティ全体をカバーしていくことができます。コペンハーゲンがその良い例です。1903年に1つの小さな地域システムから始まり、現在では街の98%に地域熱供給が普及しています。

最新の地域熱供給熱導管システム – 省エネのための最も効率的な方法

将来の地域熱供給プロジェクトでは、総所有コストが重要です

ログスター(Logstor)社セールス・ディレクター Jørgen Ægidius
プロダクトマネージャー Peter Jorsal

地域熱供給ネットワークの設計とシステムの選択は、エネルギー効率、CO2排出量、運用コストなどのパフォーマンスに大きな影響を与えます。

事業性や環境性は熱導管システムに影響される

地域熱供給の送熱用および配熱用熱導管システムは、地域社会と地域熱供給事業者のためのインフラです。熱導管システムは、消費者に熱を供給し、さらには快適性や利便性を提供する手段です。

地域熱供給ネットワークの機能性は、エネルギー効率、CO2排出量、運転・維持コストなど、地域熱供給事業の事業性に大きく影響します。現在のプレ断熱熱導管システムの技術的耐用年数は30年以上です。そのため、長期的な総所有コスト(TCO)を見直して最適化することや、それによって機能性を確保し、熱導管システムや地域熱供給事業のエネルギー効率を長期的に改善していくことが重要です。

このようにして、最新の熱導管システムは、地域熱供給の送熱および配熱に関連する多額の投資を保証します。

最適な熱導管システムを選ぶには総所有コストが重要なポイント

初期コストが高くても、技術的耐用年数が長いため、高品質の熱導管を選択することに重要な意味があります。総所有コスト(TCO)の大部分は、熱導管システムからの熱損失に起因することが、計算、試験、経験によって証明されています。したがって、システムの全運用期間中の熱損失を最小限に抑えることで、効率が大幅に改善され、ネットワークの運用コストが削減されます。このことは、以下に示すデンマークのヒレロド(Hillerød)の例でも示されています。

熱導管システムの最適化における重要な課題

総所有コストは、いくつかのパラメータに影響されます。

熱導管システムの設計は、実際の運用を想定して、最低でも30年以上の耐用年数を確保する前提で行わなければなりません。これは、欧州規格EN13941のガイドラインを使用することで、システムを簡素化し、コンペンセータやUループなどの数を減らすことで実現されます。

付随する部品は、熱導管システムの機能要件を満たすように選択されなければなりません。これは、熱導管、T字パイプ、バルグなどにも当てはまりますが、特に接合システムでは、製品自体だけでなく、適切な設置方法によっても耐用年数が左右されます。

総所有コスト(TCO)の最大の要因は、熱導管システムからの熱損失です。そのため、最適な断熱特性を持つ熱導管システムを選択することが不可欠です。さらに、単管式ではなくツインパイプを採用したり、断熱材の厚さを厚くしたり、外側のポリエチレン(PE)ケーシングとポリウレタン樹脂(PUR)フォームの間に拡散バリアを設けた熱導管システムを採用したりすることで、熱損失を減らすことができます。拡散バリアは、初期の低い熱損失が耐用年数まで変化しないことを保証します。

配管システムを耐用年数まで継続的に監視するためには、システムに欠陥があり、水分がフォーム部分に侵入してきた場合にいつでも検知できるような監視システムを設計する必要があります。このような事態が発生した場合、直ちに警報が発せられ、すぐに修理を手配することができます。これにより、期待される耐用年数を確保することができます。

コラム

ヒレロド市の総所有コストの低さ

総所有コスト(TCO)による評価は、デンマークのヒレロド市に設置されたプレ断熱パイプシステムの選定に用いられました。

プロジェクトの詳細

  • 14kmの総延長で主にパイプ径 DN80 〜 DN150 を設置
  • 運用条件、往き温度 Tf: 80℃、還り温度 Tr: 40℃、外気温度 Ta: 8℃
  • エネルギーコスト: 27ユーロ/MWh

必要なシステム: ツインパイプ(TwinPipe)

ログスター(LOGSTOR)社が検討した様々なソリューション

  • ツインパイプ TwinPipe 断熱シリーズ1、2、3

選ばれたソリューション

入札の評価基準には、直接的な投資コストに加えて、送熱システムからの30年間の熱損失に関連する運用コストが含まれており、これは投資コスト全体の約40%に相当します。また、提案された製品やソリューションの技術的価値も評価の対象となりました。

このプロジェクトのオーナーは、ログスター社が提供するツインパイプ断熱シリーズ2をベースにしたパイプシステムの導入を決定しました。このシステムは、投資コストと30年間の熱損失コストを考慮して、最も低い総所有コスト(TCO)を実現しました。

便益(ベネフィット)

ツインパイプシリーズ1を使用したソリューションと比較して約20%の省エネを実現し、この断熱シリーズ2を使用することで従来のペアのシングルパイプと比較して、熱損失を40%以上削減するエネルギー効率の高いシステム

デジタル化が計測可能な結果をもたらす

カムストラップ(Kamstrup)社のツールにより、地元の地域熱供給事業者は運用を最適化

カムストラップ(Kamstrup)社 製品管理・ソリューション部長 Steen Schelle Jensen

アッセンズ地域熱供給(Assens District Heating)は、遠隔計測可能なメーター、頻繁に取得されるデータ、そして的を絞った分析により、地域熱供給ネットワークの温度を6〜8°C下げることに成功しました。これまでに、年間の熱生産量を2.5%、熱導管の熱損失を12%削減しています。

2013年にアッセンズ地域熱供給が、インテリジェントな熱メーターと遠隔監視ネットワークのソリューションへの投資を決定したとき、デジタル化はまだ多くの人にとって抽象的な専門用語であり、その真の可能性は誰にもわかりませんでした。しかし、アッセンズ地域熱供給は、より頻繁に計測データを取得することで、最適化の機会が増えることを明確に期待していました。

データに基づく運用の最適化

膨大なデータを活用する最初のフェーズは、配熱ネットワークの最適化でした。具体的には供給温度を大幅に下げることができました。以前は、最も遠くに住んでいる末端のユーザーを基準に決定していたため、必要以上に供給温度が高くなっていました。現在では配熱ネットワークで何が起こっているかに基づいて最適化されています。

すべてのメーターが稼働すると、地域熱供給事業者はデータの壁に直面しました。

Kamstrup社から提供されたツールにより、ネットワーク全体の正確な温度を1時間単位で確認できるようになりました。運用の継続的なデジタル化により、地域熱供給事業者は供給温度を6〜8℃下げることができました。また、ネットワークにある100以上のバイパスを取り除くこともできました。

デジタル化による大幅な省エネを実現

ネットワークの運用を最適化することで、アッセンズ地域熱供給は熱生産量の約2.5%にあたる2,500〜3,000MWhを削減し、過去数年間で熱導管の熱損失を12%削減することができました。このデータは、何百キロもの熱導管を理解するのに役立ち、例えば供給温度を下げたときに実際に何が起こるのかを知ることができました。これまでは、10年以上の経験を持つ社員でも、そのような変更を行った場合の結果を完全に把握することはできていませんでした。

まもなく始まる次のフェーズでは、さらに多くの利益が得られると期待しています。これまでの省エネは、供給する温水の量と温度に着目して行われてきました。現在では、個々の建物や、エネルギー消費の少ない需要家、非効率な設備などにも目を向け始めています。

また、地域熱供給用熱導管の改修の実際の必要性を評価するためにも、頻度の高いデータが利用されています。以前は、配熱ネットワークの状態は、経年劣化や水漏れなどの要因に基づいて推定されていました。現在では、ネットワークからの熱メーターのデータと革新的な分析機能を組み合わせることで、供給能力と熱負荷の継続的なモニタリングが可能となり、配熱ネットワークのメンテナンスへの投資を最適化することができます。

デンマークの地域熱供給の歴史的概要

地域熱供給の成功の鍵

デンマークの40年間にわたる教訓から学ぶ

デンマーク・エネルギー庁長官 Kristoffer Böttzauw

地域熱供給は、デンマークのグリーンエネルギーモデルの礎となっています。何十年もの間、地域熱供給は私たちに余剰熱の効率的な利用法を提供してきました。さらに、将来的には風力発電の統合を支える重要な要素となるでしょう。

地域熱供給 — デンマークのグリーン転換の礎となる

デンマークで最初の熱電併給CHPプラントが建設されたのは1903年のこと。これは廃棄物焼却プラントで、廃棄物を処理すると同時に、近くの病院に電気と熱を供給し、2つのサービスを同時に提供することが可能になりました。

1920年代から1930年代にかけて、地域の発電による余剰熱を利用した地域熱供給システムが発展しました。その後、熱電併給(CHP)による地域熱供給が拡大し、1970年代には全家庭の約30%が地域熱供給を利用するようになりました。

エネルギー依存度と消費者コストの低減

1973/74年のエネルギー危機により、輸入燃料への依存度を下げるためにも、消費者の暖房費を削減するためにも、省エネが重要であることが明らかになりました。そこで、燃料効率の高いCHPシステムをデンマークのいくつかの都市に拡大することが決定されました。

1979年、最初の熱供給法

1979年以前のデンマークでは、熱供給を規制する法律はなかった。ほとんどの熱需要家は、小型の石油ボイラーなどで個別に暖房を行っていた。政策目標を達成するために、デンマークは1979年に最初の熱供給法を制定した。この法律には、デンマークの熱計画の形式や内容に関する規定が含まれており、現在も続く公共の熱計画の新しい時代の幕開けとなった。

高いエネルギー効率は長期計画の成果の一つ

現在、デンマークの全住宅の63%が、空間暖房と家庭用温水のために地域熱供給に接続されています。CHPによる熱と電力の生産は、熱と電力を別々に生産する場合に比べて、全体的なエネルギー効率が大幅に向上します。CHPプラントの総合効率(熱と電力の組み合わせ)は85〜90%で、熱と電力を別々に生産する場合に比べて、全体で約30%の燃料を節約することができます。地域熱供給とCHPは、デンマークのグリーントランジションにとって重要な要素であり、今後もそうあり続けるでしょう。

異なる政策目標を策定し、継続的にサポートする柔軟性

地域熱供給は、デンマークの健全で信頼できる熱の供給手段を確保します。また、地域熱供給は、デンマークが持続可能なエネルギーシステムを維持し、長期的なエネルギー政策目標を達成するために大きく貢献しています。今後も、地域熱供給はデンマークのエネルギーシステムの重要な要素であり続けるでしょう。2030年には、デンマークの電力消費量の100%を風力発電で賄うことが期待されています。そのため、風力発電のエネルギーシステムへの統合をサポートする柔軟な地域熱供給システムに注目が集まっています。したがって、地域熱供給は、デンマークの気候目標の達成に貢献するだけでなく、将来のエネルギーシステムのバランスをとる上でも重要な役割を果たします。

デンマークの熱供給マップ

計画と規制 — 必要となる条件

デンマークの地域熱供給プロジェクトを承認する際の規制プロセス、責任と要件

デンマーク・エネルギー庁長官 Kristoffer Böttzauw

1979年の熱供給法以来、継続的に改善されてきた明確な地域熱供給の規制が、地域熱供給と熱電併給CHPの普及の決め手となっている。

明確な役割と責任

デンマークの地域熱供給に関する法律は、1979年に制定された熱分野を規制する熱供給法(Heat Supply Act)に定められています。この法律では、地方自治体に、地域の熱計画、エネルギーインフラに関する意思決定、および資源の優先順位付けを行う権限が与えられています。地域の意思決定権者は、地域の熱供給システムの設計に関する全権限を持っていますが、国レベルで提供される政策と技術的な枠組みに依存しています。これにより、地域熱供給プロジェクトは、熱分野の発展に関する国の全体的な目標に沿ったものとなっています。デンマーク・エネルギー庁(DEA)は、法律とそれに付随するガイドラインを作成しましたが、同時に、個々の熱供給プロジェクトの評価と決定は、地域の都市開発、熱需要、その他の関連する地域的な考慮事項について詳細な知識を持つ地方自治体によって行われています。

1979年に制定されたデンマークの熱供給法の主な原則

  • 地方自治体は、新しい熱供給プロジェクトの承認に責任を負います。
  • 地方自治体は、社会経済的利益が最も高い熱供給手段を選択するようにしなければなりません。
  • 可能な限り、熱は熱電併給で生産しなければなりません。
  • 適正な熱供給価格は、「必要なコスト」に基づく消費者価格で提供しなければなりません。つまり、熱供給価格は実際の熱生産コストよりも高くても低くてもいけません。

また、デンマークの熱供給法では、国内に熱供給ネットワークの特定ゾーンを設けている。それぞれのゾーンでは、デンマークの熱関連法によって特定のタイプの熱供給が推進されている。ゾーンは以下の通りです。

  • 個別熱源による暖房・給湯熱供給
  • 天然ガス
  • 分散型地域熱供給
  • 集中型地域熱供給

社会経済的な費用便益分析に基づく熱供給の選択

熱供給の方法の選択は、社会経済的な費用便益分析に基づいて行われなければならない。地方自治体が適切な経済分析を行えるように、DEAは様々な社会経済的な前提条件に基づくガイドラインと方法論を提供している。これらの前提条件には、燃料価格、電力価格、CO2排出などの外部性コスト、金利などが含まれています。また、DEAは参考となる技術データも提供しています。これは、全国の地方自治体の熱供給の可能性を評価するための統一された基礎となります。

消費者の熱料金の規制

熱料金はデンマークのすべての地域熱供給エリアで同じではありませんが、熱料金を決定する原理は同じです。

熱料金の設定方法は法律で定められています。消費者が支払う熱料金は、熱供給に必要なすべてのコストをカバーするものでなければならないと法律で定められています。ただし、デンマークの法律では、地域熱供給事業者は非営利でなければならないとされています。地域熱供給事業者は、熱の生産と消費者への輸送にかかる実際のコスト以上に熱料金を請求することはできません。ただし、これらのコストには資産の減価償却費や資金調達コストも含まれており、地域熱供給事業者が短期的にも長期的にも財務的に健全であることを強調しておく必要があります。したがって、消費者が払う熱のコストは、以下の要素に影響されます。

  • 生産設備への投資
  • 地域熱供給ネットワークへの投資
  • 生産設備の運用・保守
  • 地域熱供給ネットワークの運用・保守
  • 燃料価格
  • 生産設備の効率性
  • 地域熱供給ネットワークにおける熱損失税金と付加価値税(消費税)
  • 資金援助・助成金
  • 電気料金(電気を使用または生産する地域熱供給生産施設の場合)

投資コストと運用コストの比較

地域熱供給システムを構築するには、個別熱源の熱供給方法に比べて多額のインフラ投資が必要です。しかし、多くの場合、運用コストや環境への影響は大幅に軽減されます。これは、エネルギー効率の高い熱電併給CHPユニットで熱を生産する場合や、製鉄所やセメント工場などの産業プラントの排熱を利用して熱を供給する場合に特に当てはまります。

エネルギーの平準化コスト

デンマークの経験によると、地域熱供給の実現可能性を評価する際には、熱供給システムの全寿命期間におけるコスト(一般的に「平準化エネルギーコスト」またはLCoEと呼ばれる)を考慮することが重要である。多くの場合、地域熱供給は、ライフサイクル全体の分析において最も実現可能なソリューションである。多額のインフラ投資を行っても、数年後には年間コストの低下により回収できる。もちろん、実現可能性は、熱需要や特定地域の熱密度など、多くの要因に左右されます。

高品質の部品を使用すると、最初は資本コストが高くなるものの、通常は年間コストが低くなり、多くの場合、メンテナンスコストの低減と寿命の延長により、生涯コストも低くなります。これは、熱消費者にとっては、年間の熱供給コストが下がることを意味します。高品質な地域熱供給ネットワークの技術的耐用年数は、通常40〜50年であることを考慮することが重要です。

自然独占

地域熱供給システムのコストは、熱生産設備の規模の経済性とネットワークのコストに大きく依存します。個々の消費者に熱を供給するために複数の熱供給ネットワークを維持することはコスト的に有効ではありません。そのため、消費者保護や社会的な利益を確保しつつ、グリーン転換に大きな役割を果たす技術への信頼できる投資条件を整えるためには、綿密な計画が必要となります。

コペンハーゲン広域の統合された地域熱供給システム

22の自治体で100万人の住民に費用対効果の高い低炭素熱を供給

ランボル(Ramboll)社 シニア・マーケット・マネージャー Anders Dyrelund

自治体や消費者が所有する地域熱供給事業者が、統合された地域熱供給システムを構築しています。熱は、廃棄物焼却施設(25%)と発電設備(70%)によって効率的に生産されています。ボイラーによる熱供給はわずか5%です。このシステムは、第4世代地域熱供給へと移行中です。

歴史

1903年から1979年にかけて、地域熱供給は発電所や廃棄物焼却施設の排熱や重油ボイラーを利用して着実に発展し、個別のボイラー利用に代わる有効な手段となりました。1979年以降は、熱供給法に基づき、電力や廃棄物の分野との相乗効果で、システムが大幅に拡大した。最近では、多くの天然ガスによる個別暖房・給湯とされていた地区が地域熱供給に変更され、CO2排出量を考慮した費用対効果の高い熱供給の目的を満たすために、送熱ネットワークが拡張されています。

所有(オーナーシップ)

地域熱供給事業者と廃棄物処理会社は、それぞれの自治体が所有しており、20社の地域熱供給事業者は自治体または消費者が所有しています。そのため、関わるすべての企業は、コペンハーゲンの消費者にとって最もコスト効率の良いソリューションを見つけるために協力することに強い関心を持っています。

地域熱供給システム

資源を最適に利用し、競争力のある熱価格を実現するためには、送熱システム、蓄熱タンク、熱負荷分配ユニットが不可欠です。このシステムは、7500万m2の床面積に対して熱供給しています。年間の熱販売量は8,500GWh、熱生産量は10,000GWhです。このシステムを支えるのは、全長160kmの25気圧の送熱システム(最高温度110℃)と24,000m3の蓄熱タンク3基です。このシステムは、熱交換器を介して配熱システムに接続されています。熱電併給CHPプラント、廃棄物焼却施設、50以上のピーク対応用ボイラー、その他の小規模な熱生産者からの熱供給の最適化(時間毎、日毎)は、送熱会社により運営される熱市場が担っています。

このシステムは第4世代地域熱供給へと移行中です。

  • 熱電併給CHPプラントの燃料は、石炭や天然ガスから、主に麦わらや木質バイオマスにシフトしていきます。
  • 大型のタンクや蓄熱ピットがあれば、蓄熱量は格段に上がります。
  • 地域冷房システムの数は5から20以上に増え、主に冷水蓄熱槽、冷温水のコージェネレーション、地域熱供給と共存する季節間蓄熱(ATES)などが導入されます。
  • 年間1,000GWh以上の消費者が、個別のガスボイラーから地域熱供給システムに移行すると予想されます。
  • さらに2つの自治体の近隣の配熱会社にも送熱ネットワークを拡張する予定です。
  • 変動する風力エネルギーを統合するために、さらに大型のヒートポンプや電気ボイラーを設置します。
  • 残りの部分の蒸気システムは、2020年以降すぐに温水に完全に置き換えられます。
  • CHPプラントからの過熱水(165℃)は産業プロセスのエネルギーとして供給されるため、過熱水ネットワークだけは部分的に低温ネットワークに移行する。
  • 消費者は暖房システムを改修して、戻り温度と共に供給温度を下げます。
  • これらにより、熱供給ネットワークの温度や熱損失が低減されます。
Copenhagen

CTR社とVEKS社が所有する送熱システムは、2つのCHPプラントと3つの大きな廃棄物焼却施設を20の配熱会社と相互に接続し、最適な生産と運用を実現しています。最大の配熱会社であるホーファー(HOFOR)社は、蒸気システムも運営していますが、これは温水に置き換えられつつあります。Vestforbrænding社は、自社の消費者に配熱し、夏には余剰熱を20km離れたシェラン北部のヒレロド(Hillerød)に送熱しています。

世界最大級の太陽熱と熱電併給CHPプラントの共存

太陽熱と熱電併給CHPプラントが大規模な蓄熱槽とヒートポンプを共有

シルケボー地域熱供給会社(Silkeborg District Heating Company) マネージャー Jens Jorgensen

新しい太陽熱収集プラントとの共存において、熱電併給CHPプラントは、蓄熱容量の拡張とヒートポンプへの投資により、変動する風力エネルギーの効率的なバックアップになっています。

第1段階、効率的な熱電併給CHP

シルケボー(Silkeborg)地域熱供給会社は、地方自治体が所有する公益事業です。地域熱供給は21,000の建物に供給され、シルケボーの45,000人の市民の熱需要の約95%を満たしています。20年前、同社は国のエネルギー政策の目標を達成するために、デンマーク最大の天然ガスの集中型熱電併給CHPプラント(電気108MW、熱85MW)に投資しました。このコージェネレーションのおかげで、従来のガスボイラーに比べて熱供給用の燃料消費量が削減されました。

第2段階、太陽熱と風力発電のバックアップ

電力価格の低迷により、CHPプラントの競争力が低下し、生産量が減少してきました。さらに、政府と市議会は、化石燃料の消費をさらに削減することを決定しました。プラントを閉鎖するのではなく、風が無い時に電力が高騰する時のバックアップとして機能させることで、電力の安定供給を確保します。

その第一歩として、2015年に電気ボイラー(30MW)を導入しました。このボイラーは、余剰の風力発電を利用し、電力市場の需給バランスを整えるのに役立ちます。

太陽熱と熱電併給CHPの共存

次に、CHPプラントを改良し、大規模な太陽熱収集プラント、より大きな蓄熱容量、そして大型のヒートポンプを追加しました。これにより、太陽熱とCHPの両方が、大規模な蓄熱設備とヒートポンプの恩恵を受けることになります。吸収式ヒートポンプは、CHPプラントの排気温度を65℃から23℃に下げ、熱生産量を30MW増加させ、運転温度が低くなることで太陽熱からの生産量を増加させています。この太陽熱収集プラントは、2017年に稼働した時点では世界最大のものでした。

蓄熱槽の容量を2×16,000㎥から4×16,000㎥に倍増することで、太陽熱による生産量の変動にも対応できるようになりました。また、この蓄熱により、CHPプラントの利用率を高めることができます。

吸収式ヒートポンプの25MWの冷却能力は、太陽熱による生産量を15%増加させ、排気ガスの潜熱回収によりCHPプラントの総合効率を87%から102%に向上させます(低位発熱量に基づく効率)。

太陽熱の熱生産: 70GWh
太陽熱が熱源のヒートポンプ: 10GWh
熱電併給CHPの熱生産: 280GWh
ヒートポンプによる潜熱: 40GWh
ボイラー熱生産: 3.5GWh
電気ボイラー熱生産: 2.5GWh
排熱: 9GWh(サーバー冷却、スーパーマーケットなどから)

Silkeborg

シルケボー(Silkeborg)郊外にある世界最大級の太陽熱収集プラントでは、地域熱供給システム全体を最適化しています。2つのセクションの間にある緑地は、将来的に高速道路を建設するためのスペースとしてそのまま残されています。

ハーフェンシティ・ハンブルクの地域熱供給

新たな都市開発における持続可能で収益性の高い地域熱供給

ダンフォス(Danfoss) Heating Segment社 コミュニケーション・アドバイザー Jonna Senger

ハーフェンシティ(HafenCity)は、ドイツ・ハンブルクの中心部に建設されている全く新しい市街地です。現在、ヨーロッパ最大の都市開発プロジェクトであり、都市開発の新しい基準となっています。

すぐれた都市計画

ドイツでは、全世帯の約14%が地域熱供給システムに接続されています。その中でもハンブルク市は、地域熱供給の先進都市として知られています。ハンブルク市には、全世帯の19%に相当する広大な地域熱供給ネットワークがあります。政治家は、今後も地域熱供給のインフラを拡大していくことを宣言しています。2020年までに5万世帯を地域熱供給ネットワークに追加することを目標としています。

ハーフェンシティは、ハンブルグの中心部に全く新しい市街地として建設されています。ハーフェンシティは、155ヘクタールの港湾エリアに、アパート、オフィス、レクリエーション施設、小売店、文化施設などを配置しています。都市計画として、熱供給のために最も持続可能で経済的に有利な長期的ソリューションを選択しました。すべての建物に地域熱供給で供給しています。

その目的は、経済的にも環境的にも最も厳しい要件を満たすエネルギー供給コンセプトを開発することにあります。基本的には、実績のあるハンブルクの地域熱供給システムと、集中管理されたローカルの配熱ユニットの組み合わせがコンセプトとなっています。燃料は、主に石炭、家庭ごみや産業廃棄物、天然ガス、そしてごく少量の軽油を使用しています。

将来、二酸化炭素の排出量をさらに削減するために、ハーフェンシティの既存の熱供給計画では、パイロットプラントとして蒸気タービンと燃料電池が設置されることになっています。加えて、2つの新たな熱電併給CHPの設置が Überseequartier とクルーズ船ターミナルで計画されています。また、主に住宅用の建物には、セントラル方式で給湯するための太陽熱パネルが設置されます。

持続可能な都市開発の新しい基準となるハーフェンシティ

熱と電力の組み合わせにより、発電所の排熱を無駄にすることなく、ハーフェンシティのエリアの建物の暖房に利用しています。これにより、一次エネルギーの90%を利用することができます。このコンセプトは、他の住宅地や都市にも簡単に拡大することができます。従来の化石燃料による熱供給と比較すると、年間で約370万ユーロの燃料費と14,000トンのCO2が削減されます。

バンヒル・ヒート&パワー

イノベーションを活用して公共の利益を実現する

イズリントン自治区(Islington Council)エネルギープロジェクト&プログラムオフィサー Stephen Mirkovic

イズリントン自治区(英国ロンドン)は、低コスト、低炭素、持続可能な熱をコミュニティに提供するため、世界をリードする都市部の熱供給ネットワークを実現しています。

イズリントン自治区(英国ロンドン)は、公的に所有する熱供給ネットワークを2つのフェーズに分けて構築しました。第1フェーズは2012年に運用開始しました。1.4kmの配管を持ち、820戸の住宅、2つのレジャー施設、4つのオフィスビルに供給しています。発電出力1.95MWeの熱電併給CHPエンジンが設置され、115m3の蓄熱槽を備えています。第1フェーズでは、年間2,000トンのCO2を削減しました。

第2フェーズでは、既存の公営住宅450戸、新築住宅150戸および小学校を接続する1kmにおよぶ拡張工事が進行中です。

この拡張部分には50m3の蓄熱槽が含まれ、ロンドン地下鉄の廃熱を利用した1MWのヒートポンプを中心としたエネルギーセンターが設置されています。ヒートポンプの2段階の高温システムは、双方向ファンと連動しており、ロンドン地下鉄のトンネルからの暖かい空気を取り込むと共に、冷却した空気を地下鉄に送っています。

ヒートポンプと同じ場所に、低NOxの発電出力237kWeのCHPガスエンジンが2台設置されており、ヒートポンプに電力を供給し(実質的には「ガス焚き」ヒートポンプ)、電力を系統に供給しています。

新しいスマート制御システムは、両方のエネルギーセンターを制御し、熱供給ネットワークが国の送電網にデマンド・レスポンス(DR)を提供することを以下の手段で可能にします。

  • 電気を直接消費する(ヒートポンプのみの運転)
  • 送電網に負荷をかけない運転(ヒートポンプとCHPの両方が稼働)
  • 国の送電網に電気を供給する(CHPのみの運転)

この地域熱供給ネットワークの拡張は、英国内での3つの熱導管設置プロジェクトの中でもっとも大規模です。フェーズ2では、年間500トンのCO2削減効果が得られます。

この熱供給ネットワークでは、顧客の立場に立ったエネルギーの供給を行っています。これには、24時間の連絡対応や、弱い立場の顧客への4時間以内の対応などが含まれます。

固定された熱料金は、政府が定めた燃料貧困者に対する基準額よりも少なくとも33%低く設定されています。バンヒル・ヒート&パワー(Bunhill Heat and Power)の業績は、この1年間で期待以上の成果を上げ、住宅部門は98,450ユーロの節約に成功しました。この節約分は、ガスの卸売価格の上昇による影響を軽減し、ネットワークに接続されている住人の料金を削減することで、住人に還元されています。2016年と2017年を比較すると住人への課金費用は前年に比べて18%削減されており、2017/18年は維持されています。

シャングリラ市でのエネルギー効率の向上

中国におけるエネルギー効率の高い熱供給の新しいスタンダ—ド

ABB 北欧地域マーケティング&セールスマネージャー Martin B. Petersen

非効率な個別ストーブから、ひとつにまとまった地域熱供給システムへの移行は、環境保護、経済発展、生活の質の向上につながります。

地域熱供給が大気汚染を低減し、地域環境を改善

5万人の人口がいるシャングリラ市(Shangri-La, 中国雲南省)では、主な熱源として化石燃料や木材を使用する個別ストーブによる大気汚染に悩まされていました。しかし、地域熱供給を導入することで、大気汚染が大幅に改善され、地域の生態系の保護にもつながりました。中国雲南省の北西部、標高3,300メートルに位置するシャングリラ市。暖房の必要性は非常に高い。日中の気温は低く、冬には−27℃から1℃まで大きく変化します。

地域熱供給システム全体の導入

シャングリラ市の5つの地区に供給するために、新しくて包括的な地域熱供給システムが設置されました。ABBはこのシステムのために、ボイラー室に蒸気から水への熱交換器から需要家の機器まで提供しています。

これには、市民に十分な熱を供給するために必要な電気機器や機械設備が含まれます。この自動化・電化ソリューションにより、新しい熱供給プラントを相互に接続し、最大の効率が得られるように監視することで、約5万人の住民に安全で信頼できる熱源を提供するのに役立っています。

また、空気熱源ヒートポンプを導入することで、個別に熱を作るボイラーやストーブから、水力発電によるCO2フリーの電力を利用したボイラーに転換します。これにより、システムのエネルギー効率が向上し、石炭火力発電の排出量を削減することで、生活の質の向上に大きく貢献しています。

居住者の暖房ニーズを確実に満たすために、いかに効率的に十分な熱を供給するか、5つのローカルオートメーションおよび制御システムが中央制御および監視システムと通信しています。

ストーブから地域熱供給システムへの移行により、CO2排出量を年間105,000トン、粉塵を年間460トン削減し、年間17,000トンの石炭を節約するなど、環境面でも大きなメリットがあります。

これまで数十年にわたり、エネルギー効率が高く、環境にやさしい地域熱供給ソリューションがABBを含むデンマーク企業により開発され、ヨーロッパ北部で導入されたことで、CO2排出量を大幅に削減することに成功しています。

燃料の柔軟性が地域熱供給の持続可能性を高める

エネルギーを賢く使うためのポイント

デンマーク地域熱供給協会(DBDH) ビジネスデベロップメントマネージャー Morten Jordt Duedahl

地域熱供給は、持続可能性と柔軟性を向上します。変動する再生可能エネルギーや余剰排熱など、多様なエネルギー源を利用することができます。

多様なエネルギー源

地域熱供給は、熱源の選択に関して非常に柔軟であり、風力、太陽光、工業プロセスからの余剰熱などの変動する熱源も含めて、すべての熱源に対応できます。複数の熱源を持つ大規模な地域熱供給システムでは、地域の状況や価格シグナル、環境への配慮に応じて、熱源を切り替えることが可能です。そのため、地域熱供給システムでは、新しい燃料源が利用可能になるたびに、各家庭の小型ボイラーをすべて変更する必要はありません。センター側で熱源を切り替えることができます。

電気・熱エネルギー・システムの統合

太陽光や風力などの変動する電源から作られる電力の割合が増えています。連系線や蓄電により、供給の変動をある程度緩和することができますが、十分ではなく、また、最も環境に優しく効率的な選択ではないことが多いのです。

電気・熱エネルギー・システムの統合が解決策のひとつとなります。地域熱供給網の熱生産に電気ボイラーや大型の産業用ヒートポンプを導入すれば、地域熱供給網が大きなエネルギー貯蔵システムとして機能します。また、風力発電や太陽光発電の発電量が増えすぎて電力価格が下がった場合には、再生可能エネルギーの余剰電力を熱の生産に利用することができます。

余剰熱

産業分野などで発生する余剰の温熱や冷熱は無駄になることが多いですが、地域冷暖房システムで簡単に利用できる貴重な熱源です。産業用あるいは業務用ビルが熱供給網に近接している場合、地域の地域熱供給事業者と協力して余剰熱を利用することが有益です。経済的なメリットがあるだけでなく、余剰熱を利用することで、熱生産における化石燃料の使用を代替することができます。

廃棄物からのエネルギー

廃棄物は、膨大な可能性を秘めた資源です。社会が廃棄物から得られる価値は大きいほど良いのです。

廃棄物を減らしたり、再利用したり、リサイクルができない場合でも、エネルギー回収ができます。最新の廃棄物エネルギー回収(Waste-to-energy)施設では、廃棄物の問題を解決し、電気と熱を生産して近隣地域に供給しています。最も優れた最新のシステムは、高度な技術によって100%に近いエネルギー効率を実現しています。デンマークのコペンハーゲンに見られるように、大都市の中心部に設置されていても、フィルターなどの高度な技術により、地域の環境への影響は最小限に抑えられています。

発電時に発生する膨大な量の余剰熱が無駄になっています。このエネルギー資源は、地域熱供給システムに組み込まれ、建物の冷暖房に利用されるケースが増えています。

受賞歴のある太陽熱地域熱供給

太陽熱を利用した地域熱供給は、コスト削減と環境への貢献につながる

ドロニングルン地域熱供給(District Heating Dronninglund)最高運営責任者 Casper Christiansen

デンマークのドロニングルン(Dronninglund)では、大規模な太陽熱収集設備と季節間の大規模な熱エネルギー貯蔵を組み合わせて、地域熱供給の年間需要の40%を供給しています。

太陽熱で消費者の暖房費を削減

大規模な太陽熱収集は、1980年代以降、数多くの地域熱供給用設備として導入されています。太陽はすべてのエネルギーの中で最もクリーンで、CO2排出量がゼロの、持続可能なエネルギー源です。太陽のコストはいつも同じ、ゼロです。設備コストを考慮しても、大規模な太陽熱利用システムの熱利用コストは最も低く抑えられます。さらに、騒音や臭気がなく、環境を汚さないのも魅力です。

最新の革新的な開発により、太陽エネルギーの大規模な貯蔵も可能になり、この技術は新たなレベルに達しました。ドロニングルンでは、地域熱供給を利用する1,350人の顧客が、クリーンで再生可能な技術に満足し、誇りを持っています。

それは、環境にも優しく、暖房費も約20%削減されたからです。

新たな決断が大きなインパクトに

すべての始まりは、導入後40年が経った油ボイラーの交換が必要になったことでした。これを機に、地域熱供給全体の構成を見直し、将来的に最も効果的な設備の導入を決めることにしました。アドバイザーの助言を得て、化石燃料の一部を太陽熱エネルギーに置き換えることが、経済的にも環境的にも理にかなっているという結論に達したのです。

この設備は、37,573㎡ 太陽熱収集プラントに相当する2,982個の太陽熱収集パネルで構成されています。また、大規模な季節間蓄熱槽を設置しています。これは、溶接されたライナーと断熱された蓋で形成された水ピットで、62,000㎥の水が満たされています。

これは魔法瓶のような仕組みで、夏から冬にかけて熱エネルギーを蓄えることができます。夏場は、1日の熱需要の10倍の熱を作り出し、余った熱は蓄えておきます。これにより、5月から10月までは太陽熱のみで、年間熱需要の40~50%をカバーすることができます。冬季には、天然ガスやバイオオイルで熱供給を補います。このプラントにより、1世帯あたり年間約2トンのCO2排出量が削減されました。

ドロニングルン地域熱供給は、EUROSOLAR社の European Solar Prize Award 2015 を受賞しました。この賞は、太陽エネルギー分野の先駆者やリーダーを表彰し、促進するとともに、再生可能エネルギーをベースとした分散型エネルギーの転換に新たな刺激を与えるものです。

余剰熱を利用した住宅の暖房

最適な協力関係:冷却と熱回収のために地下水を利用する方法

グルンドフォス(Grundfos)社 アプリケーションマネージャー Anders Nielsen

産業部門と地域熱供給事業者のパートナーシップは、大きな省エネをもたらし、環境改善にも貢献します。蓄熱を利用して既存の地域熱供給システムのエネルギーの無駄をなくすことで、環境への影響がゼロのビルに近づけることができます。

2013年、グルンドフォス(Grundfos)社と地元の地域熱供給事業者 GUES は、工場の冷却用コンプレッサーから取り出した排熱を地域熱供給に利用するシステムを共同で構築しました。コンプレッサーの運転には多くのエネルギーが必要であり、コストがかかります。また、余った熱は冷却塔によって大量に大気中に放出しなければなりません。少なくとも以前はそうでした。

蓄熱システム

新しいシステムは、以下の3つの要素から構成されています。冷却装置の余剰熱を利用すること、地下の帯水層に間接的に熱を蓄えること、そして蓄えたエネルギーの温度を上げるためにヒートポンプを使用することです。余剰熱は地域の地域熱供給システムに利用されます。

夏期の間、グルンドフォス社は熱を必要としないため、冷却コンプレッサーからの凝縮熱はすべて帯水層に送られ、蓄熱されます。秋には、地域熱供給システムが必要とする熱として、夏に蓄えられた熱の80〜85パーセントがまだ利用可能です。

地域熱供給ネットワークで必要とされるレベルまで温度を上げるために、ビヤリンゴ(Bjerringro)地域熱供給会社ではヒートポンプを使って温度を上げています。冬になると、地域熱供給事業者は余剰熱を蓄えた蓄熱槽およびコンプレッサーから直接取り出します。

大きなコストと排出量の削減

現在のシステムの能力ではグルンドフォス社の生産に必要な冷却能力を完全にカバーできないことは最初から明らかでした。しかし、運転開始からわずか数年で、このシステムをさらに拡張することが経済的に十分魅力的であることが明らかになりました。これにより、グルンドフォス社は従来のチラー(冷却設備)の消費電力を削減することで、二酸化炭素排出量を削減するという全体的な目標を達成することができます。

グルンドフォス社は、これまで冷却塔で使用されてきた電力消費を最大で90パーセント削減します。地域熱供給事業者は、熱電併給設備(CHP)のガス消費量を削減することができます。

合計600万米ドルのコストの半分ずつをパートナーが出資することで、年間45万7,000ユーロのエネルギーコストが削減されます。これに加えて、水のコストも削減されます。

これは8〜10年の投資回収期間に相当し、地域熱供給事業者としては問題ありませんが、産業部門の企業としては少し長いと考えられます。しかし、同時に年間3,700トンのCO2が削減され、グルンドフォス社の省エネと持続可能性に関する方針に照らし合わせると、この結果は会社にとって受け入れられるものです。

Grundfos

グルンドフォス社の工場では、地下水が冷却に使用されています。水は取水時には6~12℃、戻る時には18℃です。水の温度はヒートポンプで46〜67℃に加熱し、地域熱供給ネットワークに供給されます。暖房用ヒートポンプのCOP(Coefficient of Performance)は4.60。熱需要の少ない夏場は、余った熱を蓄えておき、後で使うことができます。

データセンターの余剰熱を利用した地域熱供給

Facebookの新しいデータセンターは、脱石炭を後押しし、ヒートポンプを導入

フュン地域熱供給 ビジネス開発部門責任者 Kim Winther

フュン地域熱供給(Fjernvarme Fyn)は、2020年初頭に、データセンターの余剰熱を利用した世界最大の地域熱供給センターの運転開始を予定しています。このプロジェクトは、排熱を回収して供給しているフェイスブック(Facebook)社との緊密な協力関係のもとに進められました。

2014年にフュン地域熱供給がフェイスブック(Facebook)社からコンタクトがあって、新たな提携関係が生まれました。その成果として、運転開始を予定しています。Tietgenbyens Varmecentra(TBV)と名付けられた地域熱供給センターは、フュン地域熱供給によって開発、所有、運営されており、デンマークのオーデンセ市にあるTBVの隣接地にあるフェイスブック社の大規模データセンターで回収された排熱を利用します。

TBVプロジェクト

この施設では125,000MWhの熱を供給することが見込まれており、これは地元の約7,000世帯の消費量に相当します。TBVプラントにはビジター・センターが設置され、この革新的なプロジェクトと排熱回収の可能性について、世界に向けて情報発信しています。

フュン地域熱供給は、2020年末までに稼働する予定でヒートポンプを追加してTBVの供給能力を拡大することを決定しました。追加された設備では、余剰熱を再利用したり、空気を熱源として利用します。

今回のTBVの拡張により、フュン地域熱供給は2020年末までに100MW以上の熱供給能力を持つヒートポンプを稼働させる予定です。このヒートポンプの能力により、フュン地域熱供給は地域熱供給の約25%を電気式ヒートポンプで賄うことができます。

優れた対話が道を開いた

フュン地域熱供給とフェイスブック社の提携を可能にした要因はいくつかあります。第一に、データセンターの立地条件が、新たなインフラの必要性を最小限に抑え、効率性を高めています。第二に、省エネのスキームなどのデンマークの法規制が、この提携をサポートしました。第三に、両者が生産的な対話を行い、資源を効率的に利用して環境に優しい社会への移行を支援するという目的が一致したことです。

蓄熱の必要性

コスト削減と安定供給

デンマーク地域熱供給協会(DBDH)ビジネス・ディベロップメント・マネージャー Morten Jordt Duedahl

蓄熱槽には多くの利点があります。地域熱供給システムの経済性を向上させ、熱の消費のタイミングを生産から切り離して、より持続可能な熱源を導入することが可能になります。

蓄熱の価値

地域熱供給の特徴は、温水を数日あるいは季節間で貯めることができることです。地域熱供給の蓄熱は、生産時と消費時のタイミングを切り離しますが、他のエネルギーを貯蔵する機能と変わりません。地域熱供給の場合は、熱電併給CHPプラント、太陽熱パネル、風力発電の余剰電力、産業からの余剰熱などを利用して、蓄えた熱を必要なときに利用することができます。デンマークでは、集中型および分散型エリアの地域熱供給用CHP(熱電併給)の両方に蓄熱設備が設置されています。

数日間の蓄熱は、主に熱電併給CHPプラントが電力需要に応じて電気と熱のコージェネレーションを最適化し、必要なときには熱を供給できるようにするものです。

大規模な蓄熱を行うことで、今まで無駄にしていたエネルギーを大幅に活用することができます。大規模な蓄熱槽では、暖かい季節から寒い季節へと熱を蓄えることができます。熱は、太陽熱収集、熱電併給CHP、変動がある工業プロセスなど、さまざまな熱源から集めることができます。

数日間の蓄熱

デンマークの地域熱供給ネットワークでは、短期の蓄熱が非常に重要な要素となっています。短期の蓄熱の主な目的は、熱電併給CHPでの電力生産を熱供給と切り離すことです。これにより、熱電併給CHPプラントは、温水の供給を損なうことなく、変動する電力市場の価格に応じてコージェネレーションの運転を最適化することができます。熱電併給CHPプラントは、電力価格が高いとき(通常は朝と夕方)のみ電気(と熱)を生産し、日中に必要になるまで地域熱供給用の温水を蓄えておく。デンマークでは、大規模な地域熱供給システムも小規模な地域熱供給システムも、短期の蓄熱を利用している。短期の蓄熱は、エネルギー・システムに柔軟性をもたらし、経済的にも環境的にもシステム全体を最適化するのに重要な役割を果たしています。

また、地域熱供給事業者が制御できない外部からの排熱を地域熱供給システムで利用する際にも、数日間の蓄熱が行われます。これらの熱源は、工場での生産が1日または1週間を通して変動する工業用の余剰熱も使うことができます。例えば、漁船が魚を獲ったときだけ稼働するような水産業などです。熱が発生する時間帯に余剰の熱があれば、数日間の蓄熱槽に蓄えることができます。

季節間蓄熱

現在、デンマークでは、夏の間に必要以上の熱を生み出す大規模な耐熱収集プラントを中心に、季節間の蓄熱が行われています。

季節間の蓄熱では、ピット型が典型的です。地面に非常に大きな穴を掘り、底にライナーを敷き、水を入れ、断熱材の浮いた層で覆う方法です。その他の方式としては、地下水の蓄熱システムがあります。この場合、低温で蓄熱し、後でヒートポンプを使って高温で利用します。地下水を利用したシステムは、大規模なピット式蓄熱槽を設置するスペースがない都市環境に適しています。どちらのシステムも熱需要が増加して秋から冬にかけて消費されるまでの数週間から数ヶ月間、熱が蓄えられます。

デンマークの多くの地域熱供給システムでは、季節間の蓄熱が将来的にますます重要になると考えられます。

コラム

余剰の風力エネルギーを地域熱供給に利用

2019年には、デンマークの総電力消費量の46.9%が風力エネルギーで賄われました。再生可能エネルギーの生産量が変動するため、デンマークでは時折、余剰電力が発生し、非常に低い価格、あるいはマイナスの価格で販売されることがあります。現在、再生可能エネルギーを直接蓄電するための大規模な技術はまだありません。

短期・長期の蓄電と組み合わせて、余剰電力を地域熱供給に利用することができます。価格が適切なときには、地域熱供給会社は電気を使って、電気ボイラーで直接、またはヒートポンプで温水を作ります。

大規模な蓄熱の可能性

季節間蓄熱 – 規模の重要性

ランボル・エナジー(Ramboll Energy)社 シニアコンサルタント Flemming Ulbjerg

世界最大級の容積205,000㎥のピット式蓄熱槽と70,000㎡の太陽熱パネルを組み合わせることで、効率的かつ費用対効果の高い方法でCO2排出量を削減。

化石燃料や消費者料金の低減

デンマークのヴォイエンス(Vojens)にある地域熱供給事業者は、新しい生産設備である太陽熱パネルから町の大部分に熱を供給しています。つい最近まで、主な燃料は天然ガスでした。一部は熱電併給CHP、一部はボイラーが熱源でした。

電気価格の低下により、熱の生産は収益性にとってますます重要になっています。この変化を受けて、熱の生産の新たな方法が模索されるようになりました。現在、ピット式蓄熱槽を含む太陽熱収集プラントは、ヴォイエンスの消費者の年間熱需要の45%を供給しています。

デンマークの地域熱供給プラントには、さまざまな法律や規則が適用されています。ヴォイエンスのようなプラントでは、燃源を天然ガスから変更することは認められていません。

経済的な節約になるからといって、例えば、バイオマスに転換は出来ません。

しかし、太陽熱やヒートポンプ、余剰熱などの省エネ対策は認められています。そこで、慎重に検討した結果、天然ガスの需要を削減するための新たな熱源として、太陽熱が選ばれました。太陽熱と蓄熱への投資総額は1,600万ユーロ。この設備からの熱の価格は40ユーロ/MWhで、デンマークでは天然ガス設備からの熱の平均価格である60ユーロ/MWhを下回っています。

季節ごとの蓄熱で柔軟性を高める

夏期(4月中旬から9月末まで)は、主に住宅用の給湯の熱需要の100%を太陽熱収集プラントでまかなっています。また、夏期には太陽熱収集プラントの生産能力が大幅に余るため、大規模なピット式蓄熱槽に熱を蓄えます。

10月以降は、太陽熱収集プラントからの供給と蓄熱からの供給を併用しています。通常、蓄熱槽からの熱は年末までに完全に使いきってしまいます。蓄熱による熱損失は、総需要のわずか6〜8%と計算されます。

この蓄熱槽は、熱電併給CHP設備と電気ボイラーの両方の熱を蓄えることができ、夏期にこれらの設備を稼働させることが可能です。この機能により、プラントの柔軟性が高まり、売電収入が増加します。

柔軟性と消費者料金の低減の両面で大きなメリットがあるため、今後、補助金がなくても、ヴォイエンスのような多くの太陽熱収集プラントや大規模な蓄熱設備が建設されることが期待されています。

地域熱供給の未来

強力な国際的ポテンシャルの実現

デンマーク・エネルギー産業連合会 シニアアドバイザー Hans Peter Slente

地域熱供給システムは、都市化の進展、技術の進歩、資源効率の重要性、消費者の快適性への要求の高まりなどにより、今後も成長が見込まれています。

これからの需要拡大

地域熱供給の利用は、国によって大きく異なります。これは、気候、都市の密集度、利用可能なエネルギー資源など、与えられた環境によるところが大きくなっています。また、規制の枠組み、建物に関する伝統、エネルギー政策の違いも、地域熱供給の普及に大きな違いをもたらしています。Euroheat & Power によると、ヨーロッパには約6,000の地域熱供給システムがあり、ヨーロッパの熱需要の12%を満たしています。

EUの総熱供給量に占める地域熱供給の割合は、いくつかの理由により増加する可能性がある。EUの都市化率は、2020年には75%、2050年には84%近くになると予想されており、人口密度の高い地域で最も効率的に機能する地域熱供給の、市場が拡大しています。現在、60%以上の世帯が地域熱供給で熱供給を受けているデンマークでも、経済的にシェアを拡大することが可能であると分析されています。その可能性は、都市部の人口密度の増大と、既存の供給エリアの地域熱供給を拡大することの両方にあります。

EUのエネルギー効率化指令では、加盟国に対し、高効率コージェネレーションや効率的な地域冷暖房の適用可能性を総合的に評価することが義務付けられています。

欧州委員会は、高効率の熱電併給(CHP)や、高効率の地域冷暖房による熱供給の割合を、加盟国がさらに促進する必要があると主張しています。このように、経済の脱炭素化を目指すEUで は、地域熱供給への注目が高まっています。加盟国は現在、地域熱供給に関する国別の熱マップや行動計画の作成を進めています。

第4世代地域熱供給

技術の進歩により、地域熱供給の利用が促進されています。地域熱供給システムで必要な温水の温度はさらに低くなり、エネルギー効率が向上しています。これにより、産業の余剰熱の利用や熱エネルギー貯蔵の利用が経済的にも合理的になります。

今後、建物のエネルギー効率はさらに向上し、1平方メートルあたりの熱需要は減少すると予想されます。しかし、空間や快適性に対する需要は増加しており、それに伴い熱需要も増加しています。そのため、効率的な低温地域熱供給のソリューションは、今後ますます重要な役割を果たすことになるでしょう。

第4世代地域熱供給は、利用可能なすべてのエネルギー源を統合することに重点を置いた地域熱供給の長い経験に基づいています。さらに再生可能エネルギーやさまざまな供給源からの余剰熱を統合します。エネルギー貯蔵と生産者や消費者とのダイナミックな相互作用により、システムの柔軟性と効率性がさらに高まります。

より低温の温水を使用し、さらに優れた配管システムを使用することで、熱損失を最小限に抑え、より多くの場所で地域熱供給を実現することができます。第4世代地域熱供給の最新の原則は、地域熱供給システムの新設や既存システムの改修・拡張の際に適用されています。

地域冷房

世界的に見ても、冷房の需要は暖房をはるかに上回っています。建物や部屋ごとに個別に冷房を行う現在の方法は、地域冷房に取って代わられることが予想されます。地域冷房は、地域熱供給と同じ原理で、エネルギー効率が高く、都市部に必要な新たなスペースを確保することでき、ユーザーにとって使い易い冷房システムになります。

現在、地域冷房の市場規模は地域暖房に比べて小さく、主に商業ビルで利用されています。地域冷房の市場は、すでに急速に成長しており、今後も成長し続けると予想されます。これは、気温の高い国ではもちろんのこと、人口、建物の規模、所得水準、そしてそれに伴う冷房需要の大幅な増加が予想される国でも同じです。

グローバルな再生可能エネルギーとエネルギーセキュリティに焦点を当てた熱分野の取り組み

ビルや地域熱供給の省エネ化に役立つ研究

オールボー大学(デンマーク) 教授 Dr. Brian Vad Mathiesen brianvad.eu

気候変動、競争力、エネルギー安全保障、天然ガスなどの輸入への依存など、欧州や世界では建築物や熱分野への関心が高まっています。

気候変動枠組条約UNFCCCのCOP21パリ協定、エネルギー安全保障、化石燃料やバイオエネルギーの燃焼に起因する健康への影響を考慮して、多くの国が地域熱供給や建築物のエネルギー効率に注目しています。これまでは、電力分野での再生可能エネルギーや、建築物レベルでのエネルギー効率化が注目されてきました。しかし、建築物の冷暖房は、ヨーロッパや世界の最終エネルギー消費量の40〜50%を占めています。そのため、世界の都市や国では、これらの課題を解決するために、建築基準法の改正や地域熱供給の活用が検討されています。2050年には世界人口の3分の2が都市に集中すると予想されており、都市部では人口密度が高まると考えられます。これからの解決策は政策レベルで地域と国が共同で取り組む必要があります。

それぞれの技術の役割を理解することが重要です。建築物レベルでの省エネ、柔軟な需要、あるいはエネルギー貯蔵の役割は何か?また、敷地内での再生可能エネルギーの供給はどの程度必要なのでしょうか?将来的には地域熱供給が必要なのか?バイオマスやヒートポンプの役割は何か?価値の低い熱をどのように利用できるか?どのような政策と計画の方法が、変化を促進することができるのか?

これらの疑問は、第4世代地域熱供給技術・システム戦略研究センター(4DHセンター)で行われている研究の中心となっています。この研究は、例えば、欧州委員会の冷暖房に関する取り組みや、UNEPが主導する世界都市地域エネルギーイニシアティブ(DESイニシアティブ)のような取組みのきっかけとなりました。

この研究では、費用対効果の高い再生可能エネルギー・システムには、建築物や地域熱供給の省エネルギーが不可欠であることが明らかになりました。費用対効果の高い転換を実現するためには、近い将来、欧州および世界の熱分野の方向性を大幅に変更する必要があります。現在、ヨーロッパで無駄になっている排熱により、ほぼすべての建築物の熱需要を賄うことができます。これらの可能性を活用するためには、エネルギー部門を統合する必要があります(スマート・エネルギー・システム)。欧州熱ロードマップ(Heat Roadmap Europe)は、4DHセンターが産業界や大学の主要パートナーと共同で実施した一連の研究の成果です。この研究は、エネルギー・システムの分析と地理情報システム(GIS)を組み合わせたものです。

これらの研究では、全欧州の熱マップ(Pan European Thermal Atlas, Peta4)とともに、世界的に展開可能な戦略と手法を提供しています。この研究によると、ヨーロッパでは2050年までに30~50%の熱の省エネと地域熱供給の割合50%の実現が可能であるとされています。

農村部では、ヒートポンプなどの個別の暖房技術と組み合わせて、高レベルの改修も必要となります。

参考文献

  • Connolly, David; Mathiesen, Brian Vad; Østergaard, Poul Alberg; Møller, Bernd; Nielsen, Steffen; Lund, Henrik; Persson, Urban; Werner, Sven; Grözinger, Jan; Boermans, Thomas; Bosquet, Michelle; Trier, Daniel (2013). Heat Roadmap Europe 2: Second Pre-Study for the EU27. Department of Development and Planning, Aalborg University.
  • Mathiesen, Brian Vad; Drysdale, David William; Lund, Henrik; Paardekooper, Susana; Ridjan, Iva; Connolly, David; Thellufsen, Jakob Zinck; Jensen, Jens Stissing (2016). Future Green Buildings: A Key to Cost-Effective Sustainable Energy Systems. Department of Development and Planning, Aalborg University.。

資料は以下のURLでご覧いただけます

コペンハーゲン市場

北欧最大の冷蔵設備で地域熱供給のコストを削減

ホイェ・タストルップ地域熱供給(District Heating Høje Taastrup)技術ディレクター Uffe Schleiss

ホイェ・タストルップ(Høje Taastrup)のコペンハーゲン市場では、北欧最大かつ最新鋭の冷蔵庫で花や果物、野菜を新鮮に保つと同時に、近隣住民にグリーンで安価な地域熱供給を提供しています。

古いマーケット広場では、各ビジネスオーナーが独自の冷却システムを持っており、その効率は様々でした。2016年4月にホイェ・タストルップ(Høje Taastrup)にオープンした67,000㎡の新しいコペンハーゲン市場では、15,000㎡冷却エリアが設けられ、大規模な共同地域冷房プラントによって供給されています。このシステムは、北欧諸国で最も包括的なものであり、エネルギー消費、気候問題、労働環境に多くの良い影響を与えています。

コペンハーゲン市場にエネルギーを供給している会社の名前はホイェ・タストルップ地域熱供給ですが、実は地域冷房も提供しています。冷房は、新たに設置された電気とアンモニアで動く冷房用コンプレッサーから供給されます。冷房のエネルギーをヒートポンプで利用することで、環境に優しい地域熱供給を実現しています。

コペンハーゲン市場の顧客には、2〜5°Cの冷水を供給する必要があります。そのためには、水をマイナス8°Cまで冷やす必要があります。地域冷房は通常、供給温度6°C、戻り温度16°Cで供給されます。コペンハーゲン市場の要求を満たすために、追加のチラー(冷却設備)を設置しました。

冷水を作るということは、その過程で相当量の排熱も発生するということです。電気で動くヒートポンプがその排熱を昇温し、必要な供給温度である73°Cの温水を近くの地域熱供給システムに送ります。このシステムは、冷水と温水の共同生産方式になっており、一方の生産がなければ他方も生産できません。

冷却能力は2MWあります。加熱能力は2.3MWで、73°Cの温水を生み出します。これは、ホイェ・タストルップ地域熱供給の6,700人の顧客の熱消費量の約2.5%に相当し、資源を考えて利用することが最優先される事例のひとつです。

コペンハーゲン市場の地域冷房システムは、必要に応じて冷却のレベルを変えられるように設計されています。市場はひとつの屋根の下で80のテナントに分かれており、そのうち55のテナントが冷熱を使用しています。各テナントには冷熱を使用する選択肢があり、必要に応じて自分のエリアのどこに冷熱を供給するかを決めることができます。消費量は、革新的なメーターによって個別に計測されます。

また、時間の経過とともに冷却能力を高めることも可能です。

低温地域熱供給に移行中の地方自治体

既存の供給エリアを第2世代から第4世代地域熱供給へ

COWI社 チーフ・プロジェクト・マネージャー Theodor Møller Moos

低温地域熱供給の利用は現実的であり、省エネと化石燃料への依存度低減の両立を可能にします。

アルバーツルン地域熱供給会社

アルバーツルン地域熱供給会社(Albertslund District Heating Company)は1964年に設立され、都市の発展に伴い地域熱供給の供給エリアも拡大しました。当初、地域熱供給ネットワークは、110℃の供給温度で運用するために設置されました。その後、温度を下げていき、現在では約90℃で運転しています。

第4世代

アルバーツルン市は、2020年までに熱と電気の供給をCO2ニュートラルにするというビジョンの一環として、供給温度を90℃から55℃に下げた新しい低温の第4世代地域熱供給システムを構築しています。これにより、既存の熱源プラントをより効率的に使用することができ、配管からの熱損失を低減することができるため、アルバーツルン市の目標であるCO2ニュートラルな熱供給の実現に貢献しています。

第一段階の成功を受けて、アルバーツルン市はこのほど、2026年までに人口約3万人の町全体を低温地域熱供給に切り替えるという大胆な決断を下しました。

課題

新築のアパートに低温地域熱供給で供給することは比較的容易ですが、古いアパートは一般的に断熱性が低く、十分な快適性を得るためには高い温度での供給が必要となります。そこで、アルバーツルン市では、アパートを低温地域熱供給に切り替えて、エネルギー効率を高める建築物の改修プログラムを実施しています。

配熱システム

改修計画と高温での配熱システムの終了に合わせて、段階的にアパート(集合住宅)を低温地域熱供給に接続します。

低温の配熱ネットワークは、「古い」地域熱供給システムからの戻り温水を介して供給され、シャントバルブを介して55℃に混合調整されます。

アパートメント・システム

アパート(集合住宅)には新しい低温熱交換器が設置されており、消費者側で45℃の住宅用給湯を供給します。レジオネラ菌は、ドイツの規則DVG WW55に基づいて設計で制御されており、熱交換器と給湯システムには常にごく少量の水しか滞留しないようになっています。改装後のアパートには、床暖房とラジエーターによる空間暖房が提供されています。地域熱供給システムからの全体的な供給温度は55℃で、ユーザーからの戻り温度は約30℃となります。

コペンハーゲンの地域冷房でのCO2排出量削減

持続可能でコスト効率の高い、従来の冷却方法に代わるもの

ホーファー(HOFOR)社 地域冷房部門責任者 Jakob Thanning

デンマークの首都では、地域冷房により、従来の冷房に比べてCO2排出量を最大70%削減し、トータルコストを最大40%削減しています。

都市で高まる冷房需要

世界の都市では気温が上昇しています。コペンハーゲンでも、何度も暑い夏を迎えたことで、エアコンや冷房の需要が高まっています。この需要に応えるためには、持続可能で都市に優しく、コスト効率の高いソリューションが必要です。

コペンハーゲン広域のエネルギー供給会社であるホーファー(HOFOR)社は、コペンハーゲンでうまく機能している地域熱供給システムをベースに、地域冷房システムを構築しました。この地域冷房システムは、地中に敷設された熱導管からなる配熱ネットワークと複数の冷水プラントで構成されており、顧客に供給する冷水を冷やすために、主に海水を使用しています。このシステムは、銀行、ホテル、デパート、オフィスなどの商業ビルに供給されるほか、サーバーやその他のプロセスの冷却にも1年中使用されています。

この地域冷房システムは、コペンハーゲンのさまざまな場所に冷水を供給しており、将来的にはより多くの顧客に供給できるように、配管システムは常に拡張されています。

ホーファー社の地域冷房への取組みは、デンマークでは最大規模のものです。最初の冷水プラントは2010年に、2番目は2013年に設置されました。2019年、ホーファー社はコペンハーゲンのオレスダッド(Ørestad)と呼ばれる地域に新たな冷水プラントを建設し、新市街地の多くのオフィスビルに気候変動対策に配慮した冷水を供給するようにしました。2021年には、コペンハーゲンで最も新しく、最も持続可能な生活エリアであるノーハウン(Nordhavn)に、ホーファー社はさらに別の冷水プラントを設置する予定です。

地域冷房システムは現在も拡張を続けており、ホーファー社は冷房需要の増加に対応するとともに、CO2排出量の削減にも貢献しています。今後も利用者を増やしていくことで、2025年にCO2ニュートラルになるというコペンハーゲンの目標にさらに貢献していきたいと考えています。

海水を利用したセントラル方式の冷水供給

冬場の顧客への冷水供給は、海水を利用して作られています。海水は港から熱導管を通って冷水プラントに送り込まれます。海水の温度は、顧客に提供する冷水の冷却に直接使用する場合、最高で6℃になります。これをゼロカーボン冷却といいます。海水が十分に冷えていない夏季には、エネルギーを使って冷水を冷やさなければなりません。海水は、他の設備の効率を上げるために使われます。海水を使って機械から熱を取り除くことで、個別のコンプレッサーと比べて電力消費量を最大70%削減できます。

都市生活の資産になる地域冷房

地域冷房ソリューションでは、顧客は個別の空調機器のメンテナンスをする必要がありません。また、配管が地下を通っているため、屋上テラスや太陽光発電、レクリエーション・スペースを確保することもできます。このようにして、コペンハーゲンは市民や観光客にとって、より環境に優しく住みやすい街となっているのです。

新たな都市エリアのためのインテリジェントなエネルギー・ソリューション

コペンハーゲンの新たな都市エリア、ノーハウン(Nordhavn)でのホーファー(HOFOR)社による将来のエネルギー・ソリューションの創造

ホーファー(HOFOR)社 地域冷房部門責任者 Jakob Thanning

デ将来の都市では、持続可能で、インテリジェントで、柔軟性に富んだエネルギー・ソリューションが提供される必要があります。持続可能な都市エリアであるコペンハーゲンのノーハウン(Nordhavn)の中でも最も新しいSvanemølleholmen地区では、ホーファー(HOFOR)社が地域冷暖房の複合施設を計画しています。このプラントには、下水ポンプステーションが併設されます。

新しい都市エリアの新しい可能性

ノーハウン(Nordhavn)は、コペンハーゲンで最も新しく、最も持続可能な都市エリアです。コペンハーゲン広域のエネルギー供給会社であるホーファー(HOFOR)社は、この地区に新たな地域冷房プラントを2021年に設置する予定です。これにより、この地区にある多くのオフィスビルが、気候変動問題に配慮した地域冷房に接続できるようになります。しかし、ホーファー社は通常の地域冷房プラントを計画するのではなく、冷房プラントと海水を利用した最新のヒートポンプを組み合わせて、同時に温水も供給することを目指しています

地域冷暖房によるエネルギー供給

コペンハーゲンの地域冷房システムでは、主に海水を利用して、ホテルや銀行などの商業施設の冷房や、サーバーの冷房に使用する冷水を1年中冷やしています。また、ホーファー社はコペンハーゲンにヒートポンプを数台設置して、地下水、下水、海水などのエネルギー源を利用しています。これらは、将来的に環境に優しい地域熱供給を首都に供給する可能性のある主要なエネルギー源の一部です。

ノーハウン地区の最も新しい地区である Svanemølleholmen は、現在、工業地帯からオフィス街へと変貌を遂げつつあります。多くの建物に地域暖房と地域冷房が供給されることになり、ホーファー社はこの機会に地域冷暖房の統合による効率的な運用方法をテストし、実証を行います。これは、海水を利用した最新のヒートポンプと地域冷房プラントを一カ所に設置することで実現したもので、下水ポンプも併設されています。

このポンプを使用して、エリアの廃水を確実に排出することができます。

冷暖房の統合

ホーファー社がオフィスビルを地域冷房で冷房した場合、建築物の余剰熱を利用して地域熱供給を供給することができます。同様に、地域冷房の冷水をヒートポンプの冷却に利用することもできます。その結果、ノーハウン地区のプロジェクトは、地域における新しい環境技術のテストと実証の事例として活用することができます。また、ノーハウン地区での統合プロジェクトは、他の場所で活用するためのフィージビリティスタディの事例としても活用できます。

ホーファー社がノーハウン地区に導入したソリューションは、コペンハーゲン市民の二酸化炭素排出量を削減し、2025年までにCO2ニュートラルにするというデンマークの首都の野心的な目標の達成に貢献しています。これらのソリューションは、ノーハウン地区でテストされ、実証された後、世界中の主要都市の新しい都市部にも拡大することができます。

Nordhavn

コペンハーゲンの古い工業地帯は、大規模な変革を遂げ、持続可能な都市開発の一例となっています。200ヘクタールのノーハウン(Nordhavn)地区には、2050年までに4万人の住民と4万人の雇用が創出されると予想されています。この新たな都市エリアには、ホーファー社によるインテリジェントなエネルギー・ソリューションが導入される予定です。(写真:By & Havn)

関係機関

State of Green

ステイト・オブ・グリーン

デンマークは、グリーン成長に基づく経済への移行を進めており、2050年までに化石燃料からの独立を目指しています。そのため、ステイト・オブ・グリーン(State of Green)では、課題について議論することに関心のある国際的なステークホルダーとの関係構築を促進し、グリーン・トランジション(グリーン転換)を可能にする関連するデンマークのソリューションを活用することを目指しています。
600を超えるデンマークの企業、政府機関、研究機関、専門家、市民社会機関の窓口として、ステイト・オブ・グリーンは、持続可能な低炭素・資源効率の高い社会への世界的な移行を推進しているデンマークの関係機関を紹介しています。
ステイト・オブ・グリーンは、デンマーク政府とデンマークの4つの主要なビジネス団体(デンマーク産業連盟、デンマーク・エネルギー協会、デンマーク農業食品理事会、ウィンド・デンマーク)との間の非営利・官民パートナーシップです。デンマークのフレデリック皇太子殿下は、ステイト・オブ・グリーンの後援者です。
Webサイト(英語)
Webサイト(日本語)
DEA

デンマーク・エネルギー庁

デンマーク・エネルギー庁は、デンマークにおけるエネルギーの生産、供給、消費に関連するすべての国内および国際的な協定や業務を取り扱う責任を負っています。また、温室効果ガス排出量の削減にも取り組み、デンマークにおけるエネルギーの信頼性が高く、安価でクリーンな供給を管理する法的・政治的枠組みを管轄しています。
デンマーク・エネルギー庁のグローバル協力部門は、パートナー国と協力して、将来の持続可能なエネルギー供給と経済成長の両立を目指しています。この取り組みは、再生可能エネルギー、エネルギー効率化、低炭素技術 の拡大に向けたエネルギー部門の変革など、40年にわたるデンマークの経験に基づいています。同庁は、デンマーク気候・エネルギー・ユーティリティ省に属しています。
Webサイト
DBDH

デンマーク地域熱供給協会(DBDH)

DBDHは会員制の組織です。その使命は、持続可能な都市の変革のために 地域熱供給を促進することです。DBDHの目的は、メンバーと50カ国以上のパートナーとのパートナーシップを特定し、情報を提供し、促進することです。
DBDHは、デンマークの地域熱供給分野の主要な関係者を代表していま す。DBDHには、熱や熱電併給の供給事業者、廃棄物焼却、送配熱、民間のコンサルティング会社、研究開発機関や研修機関、この分野のプラント、システム、コンポーネント、製品の製造会社などが含まれます。
DBDHは会議、セミナー、展示会を開催しています。さらに、DBDHは、地域熱供給のあらゆる側面に関連する情報を交換する目的で、海外の地域熱供給組織との協力協定を締結・維持しています。
Webサイト
DI

デンマーク・エネルギー産業連合会(DI Energy)

DI Energyは、エネルギーの探査・生産から、最新のエネルギー技術やソリューションの開発・製造、ソリューションやシステム全体のエンジニアリングまで、あらゆるエネルギー技術とバリューチェーン全体にわたるデンマークのエネルギー産業を組織しています。デンマークには、技術革新、製造、そして持続可能で耐久性がありコスト効率の高いエネルギー・ソリューシ ョンの輸出を行う強力な産業クラスターがあります。DI Energyは、デンマークを、国際的に大きな影響力を持つ強力なエネルギー産業の拠点とし て、さらに発展させることを目指しています。
DI Energyは、より高いエネルギー効率とより多くの再生可能エネルギーの利用への移行を可能にするエネルギー政策を、デンマーク、ヨーロッパ、 そして世界レベルで支援しています。国内外の企業や当局との強力な協力 関係を通じて、増え続ける世界のエネルギー需要を満たすことに貢献して います。DI Energyは、デンマーク企業の声を代表するデンマーク産業連盟(DI)の一員です。
Webサイト